歯がしみて神経を取ることが心配な方へ
歯がしみる原因と受診の目安
「冷たい水を飲むとキーンとしみる」
「前に治療した詰め物の周りが、最近なんとなくしみる」
そんな症状で歯科医院を受診して、
「虫歯が深いので神経を取りましょう」と言われ、驚いた方もいるのではないでしょうか。
あるいは、そう言われるのが怖くて、しみるのを我慢している方もいるかもしれません。
結論から言うと、歯がしみることと、神経を取る必要があることは、同じではありません。
しみる原因はいくつもあり、原因によって対応は大きく変わります。
今回は次の内容を解説します。
- ①歯がしみる主な原因
- ②症状から分かること、分からないこと
- ③神経の状態を調べる検査
- ④原因別の対応と、神経を残せる場合・残せない場合
- ⑤受診を急ぐべき症状の目安
歯がしみる主な原因
歯がしみるのは、歯の内部の神経(歯髄)が、外からの刺激を感じ取っているサインです。
原因は、大きく次の4つに分けられます。
- 象牙質の露出(知覚過敏・くさび状欠損):歯ぐきが下がったり、歯の根元がすり減ったりして、刺激を伝えやすい象牙質が出ている状態です。
- 詰め物・被せ物のすき間からの虫歯(二次う蝕):以前の治療部分のすき間から細菌が入り、内部で虫歯が進んでいる状態です。外から見えにくいことがあります。
- 歯のひび(クラック):噛みしめや歯ぎしりなどで、歯に細いひびが入り、そこから刺激が伝わる状態です。レントゲンには写りにくく、診断が難しいことがあります。
- 歯髄の炎症(歯髄炎):深い虫歯などで細菌が歯髄に近づき、歯髄に炎症が起きている状態です。
このうち、神経を取るかどうかの判断が必要になるのは、主に4つ目です。1〜3の場合は、原因に応じた別の対応を考えます。

症状から分かること、分からないこと
歯髄の炎症は、一般に「元に戻る可能性のある炎症(可逆性歯髄炎)」と
「元に戻りにくい炎症(不可逆性歯髄炎)」に分けて考えます。
症状は、その見当をつけるうえでの目安になります。
可逆性に近い症状
- 冷たいものや甘いものがしみるが、刺激がなくなると数秒でおさまる
- 何もしていないときは痛まない
不可逆性を疑う症状
- 何もしていなくてもズキズキ痛む(自発痛)
- 夜、横になると痛みで眠れない
- 冷たいものや温かいものでしみた痛みが、刺激を除いても長く続く
ただし、これはあくまで目安です。症状だけで、歯髄の状態を正確に判断することはできません。
炎症の程度と、痛みの強さは必ずしも一致しないためです。
痛みが自然に消えた場合も、治ったとは限りません。
歯髄が壊死して、痛みを感じなくなっている場合があるためです。
そのため、症状に加えて、次に述べる検査や画像の所見を合わせて判断します。
神経の状態を調べる検査
しみる原因と歯髄の状態を調べるために、次のような検査を組み合わせます。
- 問診:いつから、どんな刺激で、どのくらい続くか
- 冷温診・電気歯髄診:刺激に対する反応を調べる検査
- 打診・触診:歯の周りの組織の状態を調べる検査
- レントゲン検査:虫歯の深さや、根の先の状態を調べる検査
- 拡大視野での観察:詰め物のすき間やクラックの有無を確認する
なお、冷温診や電気歯髄診は、歯髄の「感覚の反応」を調べる検査で、血流を直接調べるものではありません。
1つの検査だけで、歯髄の状態を断定することはできません。複数の所見を総合して判断します。
原因別の対応:神経を残せる場合、残せない場合
対応は、原因によって異なります。
歯髄の炎症以外の3つの原因は、原因に合った対応に進みます。
歯髄の炎症では、歯髄の状態によって、歯髄保存療法か根管治療かが分かれます。
対応の例は、次の表のとおりです。
|
しみの原因 |
主な対応の例 |
|---|---|
|
象牙質の露出(知覚過敏・くさび状欠損) |
歯みがきや噛み合わせの見直し、薬剤の塗布、接着性の材料による封鎖 |
|
詰め物・被せ物のすき間からの虫歯 |
虫歯の除去と、やり直し治療 |
|
クラック |
ひびの範囲の確認、接着修復や被せ物による保護、経過観察 |
|
歯髄の炎症 |
歯髄の状態により、歯髄保存療法(断髄など)または根管治療 |
歯髄の炎症が疑われる場合は、神経を残せるかどうかを慎重に見極めます。
歯髄保存療法(断髄など)で神経を残せることがあります。
ある系統的レビューでは、断髄の成功率は、歯髄の炎症が軽い(正常・可逆性)場合で約97%、
症状のある不可逆性歯髄炎の場合で約90%でした。(Vital Pulp Therapy in Permanent Teeth: A Systematic Review and Meta-Analyses)。また、不可逆性歯髄炎の歯への断髄を調べた別のレビューでは、成功率は12か月後で95%、36か月後で88%と報告されています(Duncan ら 2022 )
ただし、これらは研究での数字です。研究によって対象や判定基準が異なり、個々の歯の結果を保証するものではありません。時間とともに成功率が下がる傾向もあり、後から根管治療が必要になることもあります。
歯髄の炎症が強い場合や、歯髄がすでに壊死している場合は、根管治療が必要です。
深い虫歯の治療で、どこまで虫歯を取り除くかの考え方は、前回の記事「深い虫歯でも神経を残せることがある?」で詳しく解説しています。
神経を残すことを考える理由と、その限界
歯髄は、痛みを感じるだけの組織ではありません。
噛む力や刺激を感じ取り、歯を守る役割もあります。
神経のない歯は、虫歯ができても気づきにくく、神経のある歯に比べて、歯が割れるリスクが高いと考えられています。
米国の歯科保険組合のデータを用いた研究(2005年)では、
根管治療をした臼歯は、反対側の神経がある同様の歯に比べて、7.4倍失われやすいと報告されています。
一方、小臼歯や前歯では、統計的に明らかな差は示されませんでした(Caplan ら 2005)。
ただし、この研究には限界があります。根管治療をした歯は、もともと歯髄に問題が起きた歯です。
治療の影響だけでなく、そこに至った原因の影響も含まれている可能性があります。
また、根管治療をした歯が、必ず悪い経過をたどるわけではありません。
根管治療をした臼歯の生存率は、4〜7年で91%、8〜20年で87%という報告があります(Patel ら 2024)。
適切な根管治療と修復を行えば、長く使える歯も多くあります。
つまり、神経を残せる可能性があるなら検討する価値はありますが、残すことが常に正解とは限りません。
歯髄の状態、虫歯の深さ、歯の残り方、そして患者さんご自身が何を大切にしたいかを踏まえて、選ぶことが大切です。
受診の目安
次のような症状がある場合は、とにかく早めに歯科医院で診てもらってください。
- 何もしていなくてもズキズキ痛む
- 夜、痛みで眠れない
- 刺激がなくなっても、痛みが長く続く
- 歯ぐきが腫れている、噛むと強く痛む
しみる程度の症状でも、数週間続く場合や、だんだん強くなる場合は、受診をおすすめします。
早い段階で原因を調べるほど、選べる治療が増える可能性があります。
まとめ
- 歯がしみることと、神経を取る必要があることは同じではない
- しみる原因は、象牙質の露出、詰め物のすき間の虫歯、クラック、歯髄の炎症など、複数ある
- 症状だけでは、歯髄の状態は判断できない
- 歯髄の炎症だと歯髄保存療法か根管治療が必要
- 歯髄保存療法で神経を残せることがあるが、後から根管治療が必要になることもある
- 神経を残すことが、常に正解とは限らない
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当院の歯髄保存・精密根管治療について
当院では、しみる原因と歯髄の状態を、検査と画像で丁寧に調べたうえで、歯髄保存療法を含む複数の選択肢をご説明します。
「神経を取ると言われたが、本当に必要なのか知りたい」という方は、治療を始める前にご相談ください。

