3ヶ月ごとにクリーニングしていたのに、なぜ歯周病が進行したのか①
歯周病のメインテナンスは、なぜ難しいのか
「治療して終わり」ではない病気
「歯周病の治療を受けて、定期的にクリーニングにも通っています。それなのに、また歯周病が進行していると言われました」
このような相談を受けることがあります。
患者さんからすると、「ちゃんと通っていたのに、なぜ?」と思うのは当然です。
しかし、ここには歯周病という病気の難しさがあります。
歯周病は「治療して終わり」ではありません
むし歯の場合、原因となる病変を治療して修復すれば、その歯についての治療が一旦完了することがあります。
一方、歯周病は少し事情が違います。
歯周病は、治療によって炎症を抑え、歯周組織を安定させることができても、その後も再発・再進行するリスクがあります。
そのため、治療後には、
「治ったから何もしなくていい」ではなく、
「現在の状態が安定しているかを継続的に確認する」
ことが重要になります。
これが歯周病のメインテナンスです。
メインテナンス=クリーニング、ではありません
歯周病のメインテナンスで歯石やプラークを除去することは重要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
本来のメインテナンスでは、
- 歯周ポケットの状態
- プロービング時の出血(BOP)
- プラークコントロール
- 歯の動揺
- 歯肉の状態
- 必要に応じたX線画像
- 喫煙などのリスク因子
- 過去の治療結果
などを継続的に確認し、
「前回と比べて、状態は安定しているのか」を評価します。
つまり、
クリーニングはメインテナンスの一部であって、メインテナンスそのものではありません。
「3ヶ月」が重要なのではありません
「歯医者は3ヶ月に1回」という言葉をよく聞きます。
しかし、歯周病のメインテナンスについて、すべての患者さんに同じ間隔が適切というわけではありません。
欧州歯周病学会(EFP)のガイドラインでは、歯周病治療後の支持療法について、
患者さんのリスクや歯周組織の状態に応じて、おおむね3~12ヶ月の範囲で間隔を設定するという考え方が示されています。
つまり、「3ヶ月だから正しい」のではなく、「その患者さんにとって適切な間隔か」が重要です。
ハイリスクの患者さんでは1ヶ月の間隔が適切なこともあるのです。
歯周病のメインテナンスが難しい理由
さらに難しいのは、歯周病の状態がいつも一定ではないことです。
一度安定したように見えても、
- プラークコントロールが悪化する
- 喫煙などのリスク因子が続く
- 深い歯周ポケットが残っている
- 被せ物などの清掃が難しい部位がある
- 咬合や歯の形態など別の問題が生じる
など、さまざまな要因によって状態が変化する可能性があります。
だからこそ、メインテナンスでは、「掃除をして綺麗にする」ではなく、「病気が安定しているか」を見る必要があります。
「出血した=骨が溶けている」わけでもありません
歯周病のメインテナンスで重要な指標の一つが、プロービング時の出血(BOP)です。
ただし、出血があったからといって、その時点で「骨が溶けている」と判断できるわけではありません。
出血は歯肉の炎症を評価する重要な情報ですが、病気の進行を判断するには、歯周ポケットの深さや付着の変化、必要に応じたX線画像などを時間経過とともに比較することが重要です。
つまり、1回の検査結果だけではなく、「以前と比べてどう変化したか」
を見ることが歯周病管理では非常に重要になります。
患者さんの努力だけでも、歯科医院の処置だけでもうまくいきません
歯周病の管理では、毎日のセルフケアが重要です。
しかし、歯周病の進行を「歯磨きが足りなかったから」とだけ説明するのも適切ではありません。
歯周病にはさまざまなリスク因子があり、患者さん自身では確認できない歯周ポケットの変化などもあります。
だからこそ、
患者さんのセルフケア
と
歯科医院での検査・評価・必要な処置
の両方が必要になります。
歯周病のメインテナンスは「再発・再進行を警戒する医療」です
歯周病の治療で大切なのは、「治療が終わった」ことではありません。
その後も、
検査 → 評価 → 必要な治療 → 再評価 → 支持療法
という流れを繰り返しながら、歯周組織をできるだけ長く安定させていくことです。
歯周病のメインテナンスは、単なる「歯のお掃除・クリーニング」ではありません。
再発・再進行のリスクを抱える病気を、長期間にわたって管理していく医療です。
だからこそ、簡単ではありません。
そして、次回のメインテナンスで大切なのは、
「何を掃除するか」だけではなく、「何を調べ、何を評価するのか」
ということになります。
次回は、**「では、良い歯周病メインテナンスでは、具体的に何をするのか」**について説明します。

