根管治療の「1回法」と「複数回」はどちらが優秀?
終わりの見えない治療。「1回で終わる歯医者」の方が優秀?
「根管治療で何回も通うのは嫌だ」
「ネットで『1回で終わる根管治療』を見たけれど、早く終わる歯医者の方が腕が良いのではないか?」
終わりの見えない根管治療に対して、このような疑問や不満を抱くのは当然のことです。
口を開け続ける負担や、何度も通院する手間を考えれば、治療回数が少ないに越したことはありません。
回数だけで、治療の良し悪しは決まらない
「何度も通わせるのは、歯医者の腕が悪いからだ」と疑ってしまうお気持ちは痛いほどわかります。
しかし、大分市で25年以上数多くの根管治療と向き合ってきた歯科医師として、
そして最新の医学的エビデンスに基づき、はっきりとお伝えします。
「1回で終わるから優秀」「何回もかけるから丁寧」という見方は、どちらも間違いです。
しかし、個人的には3回以上の根管治療はこの10年で一度もありません。
最新エビデンスが暴く「通院回数」と「成功率」の真実
世界的な医学的エビデンスにおいて、1回法と複数回法で治癒率に明確な差がないことが証明されています。
2008年のCochraneレビューでは、根管治療の有効性に検出可能な差は認められませんでした。さらに、2025年のシステマティックレビュー、および2026年に報告されたアンブレラレビューにおいても、術後の痛みや治癒率において、一貫した臨床的に重要な差は確認されていません。
つまり、「1回で終わる=成功しやすい」という事実もなければ、「1回は手抜きで危険」という事実も存在しないのです。
しかし、「複数回やっても一回でも差がないなら1回で終わっていい」というわけでもありません。
では、なぜ回数に違いが出るのでしょうか。
それは、患者様の「歯の悲鳴(状態)」に合わせて回数が決まるからです。
複雑な修復物を除去しなければならない、
むし歯が大きく隔壁を作らなくてはならない、
穿孔の修復や破折した器具の除去も必要かもしれません。
根の先に大きな病変がある、感染が強く排膿や出血がある、
あるいは根管形態が極めて複雑な場合は、時間がかかり複数回に分ける必要があります。
一方で、感染が少なく1回で根管充填まで行える場合は、通院負担を減らし、治療途中の仮封期間を短縮できる大きなメリットがあります。
それでも60分から120分の時間は必要になることがほとんどです。
回数ではなく「1回の時間と工程」こそが本質
精密根管治療で本当に重要なのは、「何回で終わるか」ではなく「1回の治療で、必要な工程をどれだけ省略せずに完遂できているか」です。
唾液中の細菌侵入を完璧に防ぐラバーダムの装着。マイクロスコープでミクロン単位の亀裂を見極めるプロセス。そして、AAE(米国歯内療法学会)が警告するように、根の中をきれいにするだけでなく、細菌の再侵入を防ぐ「最終修復(被せ物)」までを確実に行うこと。
これら「歯を守るための絶対条件」を実行するには、相応の時間が必要です。
私たちが自由診療の環境で提供しているのは、医院の回転率のために工程を省くことでも、無意味に回数を引き伸ばすことでもありません。目の前の歯を一生残すために、最も合理的で成功率の高い工程を処方することです。
「何回通えば終わるか」という呪縛からの脱却
「1回で終わる歯医者が名医」という表面的な情報や広告に惑わされないでください。
回数という数字だけにとらわれてしまうと、ラバーダムの装着や精密な接着といった「本当に必要な工程」が省略されている時短治療を見落としてしまう危険性があります。
あなたの歯の寿命を左右する、妥協なき治療の選択
歯科医院を選ぶ際は、「何回通えば終わりますか?」と尋ねるだけでなく、「なぜその回数が必要なのですか?」と問いかけてみてください。
その答えにこそ、妥協なき治療の哲学が隠されています。
ご自身の歯を一生の資産として守り抜くために、
回数に縛られず、必要な工程を一切省略しない真の精密治療を選択してください。

