「保険は最低限の治療」の本当の意味。日本の制度と世界基準
今日で6月も終わり。6月は診療報酬改定があるため日本中の医療機関はドタバタします。
破綻している国民皆保険の本質的な問題を改定した方がいいと思うのですが、しないんでしょうね。
1. 「保険は最低限の治療です」と言われて不安になっていませんか?
歯科医院で治療の相談をしている際、担当の先生から
「保険診療は最低限の治療になります。しっかり治すなら自費診療の方が良いですよ」と説明されたことはありませんか?
この「最低限」という言葉を聞いて、多くの方が言葉にできない不安や違和感を覚えるかもしれません。
「最低限って、手抜きをされるということ?」
「保険証を持っていれば、国民は皆、まともな医療を受けられるはずではないの?」
「高い自費の治療を受けさせるための、ただの営業トークなのでは?」
ご自身の大切な歯のことですから、このような疑問を持たれるのは非常に自然なことです。
2. 「手抜きをされるのでは?」という疑問は当然です。しかし原因は「ルール」にあります
25年以上にわたり臨床の現場で多くの患者様と向き合ってきた私としても、患者様がそのように受け取ってしまうお気持ちは痛いほどよくわかります。
まず、誤解を解いておきたいのは、保険診療を行っている多くの歯科医師は決して「手抜き」をしているわけではないということです。皆、目の前の患者様を良くしようと必死に治療にあたっています。
では、なぜわざわざ「最低限」という言葉が使われるのでしょうか。
実は、この問題の本質は歯科医師の技術やモラルにあるのではなく、日本の保険診療というシステムが抱える「構造的なルール」に隠されています。そして、歯科医療の世界には、患者様にはあまり知られていない「2つの異なる最低限」が存在するのです。
3. 誰も教えてくれない「2つの最低限」の決定的な違い
① 日本の保険制度が示す「経済的・制度的な最低限」
日本の国民皆保険制度は、戦後の物資が乏しい時代に「誰もが安価に、痛みをとってとりあえず噛めるようにする」ことを目的に作られました。この制度における「最低限」とは、国の限られた財源の中で提供できる「経済的な最低ライン」を意味します。
採算を合わせるため、1人の患者様にかけられる治療時間は「約20〜30分」に制限され、使用できる材料も数十年前から変わらない銀歯(パラジウム合金)などが指定されています。金属が高騰すればそれを補うためにプラスチックが保険導入されました。今回の改定ではいよいよ、奥歯のBr(ブリッジ)までもプラスチックを承認してしまいました。そこに医療倫理や学術は存在しません。とにかく、これ以上安い医療は世界中に存在しないのです。
② 現代の医学的エビデンスが示す「生物学的な本来の最低限」
一方で、世界的な医学の進歩により、歯をできるだけ残すために「最低限やらなければならないこと」の基準は劇的に変化しました。
唾液の中にいる無数の細菌から歯を守るための「ラバーダム防湿」を行い、人間の肉眼では見えないミクロの汚れを取り除くために「マイクロスコープ(顕微鏡)」を使用する。そして、健康な歯質を1ミクロンでも多く残す(MI:最小侵襲)こと。接着をきちんとする為に乾燥下で作業ステップを遵守すること。これらが、現代のエビデンス(科学的根拠)が示す「生物学的な本来の最低ライン(グローバルスタンダード)」なのです。
つまり、日本の制度が定める「経済的な最低限」と、歯の寿命を守るための「本来の医学的な最低限」の間には、埋めようのない恐ろしいほどのギャップが生じてしまっているのです。
4. 「贅沢」ではなく「本来の最低限」を守るための自由診療とMIアプローチ
この2つのギャップを埋めるためには、どうすればよいのでしょうか。
保険診療の「1回20分の壁」の中では、ラバーダムを装着し、マイクロスコープを覗き込みながら、感染源だけを精密に取り除くという「本来の最低限」の処置を行うことは、物理的に極めて困難です。
私自身、かつては保険診療の中でなんとか最善を尽くそうと葛藤し続けました。しかし、患者様の歯の寿命を本質的に守り抜くためには、圧倒的な「時間」を確保するしかないという事実に直面しました。約10年前に保険診療の枠組みを完全に外し、現在の「非保険医」へと移行したのはそのためです。
当院が提供している自由診療は、決して「贅沢で特別な治療」を提供しているわけではありません。世界基準で見れば「歯を残すために最低限やらなければならない当たり前のこと」を、1本の歯に時間をかけて忠実に実行しているだけなのです。
5. 日本の「最低限」を選び続けると、最終的に最大の代償を払うことに
もし、費用が安いからという理由だけで、日本の制度的な「最低限」の治療を選び続けた場合、どのような未来が待っているでしょうか。
短い時間での治療や肉眼だけでの処置は、構造上どうしてもミクロの虫歯菌の取り残しや、詰め物の隙間を生みやすくなります。そこから数年後に再び虫歯が再発し、また削る。この負の連鎖を繰り返すことで、歯は確実に寿命を縮め、最終的には「抜歯」となり、数十万円の高額なインプラントや入れ歯が必要になります。
多くの歯科医院のHPやブログでは、「保険=銀歯で虫歯になりやすい」「自費=セラミックで長持ち」という「素材(モノ)の違い」でしか説明していません。しかしながら本質はソコではないのです。
目先の出費を抑えるための「最低限の治療」が、結果的にご自身の大切な臓器(歯)を失い、生涯で取り返しのつかない代償を払うことになってしまうのです。
6. 制度に依存せず、ご自身とあなたの歯の「本当の価値」へ投資を
「保険は最低限」という言葉の裏にある、本当の意味がお分かりいただけたでしょうか。
日本の保険制度は、痛みを取り除く応急処置としては世界トップクラスです。しかし、「一生涯、自分の歯を残す」という目的においては、そのルールに限界があることを、私たち自身が知っておかなければなりません。
何度も再発を繰り返して将来の抜歯に怯えるのか。それとも、ご自身の生きた臓器(歯)の価値に気づき、医学的に正しい「本来の最低限」の環境に投資をするのか。
もしご自身の歯を本気で守り抜きたいとお考えであれば、まずは現状を「正しく知る」ためのセカンドオピニオンをご検討ください。制度の制限に縛られない、客観的で科学的な診査診断をもとに、あなたの大切な歯を救うための最善の選択肢をご提示いたします。

